Director’s Eye

プロが考える映像作品の作り方

台本を書く技術 その1

通常、企画が固まり、大まかな構成ができると、台本を作ります。

台本つくりはディレクターの仕事の中でも一番大変で且つ、最もクリエイティブな作業でもあります。

何しろ、頭の中で完成形を作るのですから、極端に言えば、ここをきっちり作ってさえおけば、あとはプラン通りに作業を進めるだけとなります。

もっとも、実際の撮影や編集は、台本通りに進まないから難しくもあり、楽しくもあるのですが。

今回はそんな台本のエトセトラ。

分野によって台本は変わる

一言で台本と言っても、作品の分野によってその作り方は当然違ってきます。

映画やドラマならば登場人物の心情をどこまで書き込むかが大切でしょう。台詞は特に重要となりますが、役者によってはアドリブを入れることがあります。そして、どの程度のアドリブなら物語が成立するのか判断できる台本でなくてはなりません。

これは台本の一種と言えますが、厳密には「脚本」です。

逆にスタジオで進行するようなバラエティー番組では、台詞なんてきっちり決めてしまっては面白くならないでしょう。だから、バラエティー番組などの台本は「進行台本」です。

CMの場合は15秒、もしくは30秒という短い時間の台本になります。厳密に言えば、台本と言われるものはありません。ほとんどの場合は絵コンテです。出演者のセリフもナレーションもすべてが1枚の紙に書かれているのが理想です。

ナレーション原稿

今回のテーマは、以上のような映画やドラマ、バラエティー番組、テレビCMとはちがい、私の専門分野である企業映像などの台本です。

商品プロモーションや、取説映像、サービスプロモーション映像など、一言で企業映像と言ってもその内容は様々ですが、おおむね共通しているのが、「ナレーションで進行する」ということです。

よって、ここで説明する台本は「ナレーション原稿」と言ことになります。

だからといって、映画やドラマの脚本、バラエティーの進行台本、CMの絵コンテを書くに当たって役に立たないようなことを言うつもりはありません。

どんな脚本、台本にも共通する技術があります。

ただし、その内容は非常に些細なことです。「え、それだけのこと?」と思われるかもしれません。枝葉末節と言ってもいいでしょう。それでも、枝葉末節の技術すら知らずに書かれた台本が多すぎるのも事実です。はっきり言って、世の中にはプロの仕事とは思えないナレーションが氾濫しています。多くの人は気にもしないことかもしれませんが、私は耳にするたびに不快になります。

易しい言葉で

 一般的に、「ナレーション原稿の書き方」では、まず「簡潔に、わかりやすく」書くことが大切、と言われています。

 ナレーション原稿を通常の文章とは違います。最終的には文字ではなく音になるものです。

文字を読めば理解できる言葉も耳で聞いたらすぐにはわからない、ってことありますよね。

例えば、熟語を使っているときはとりあえず再考してみるのがいいでしょう。決して難しい言葉ではありませんが、「的確な」とか「難解な」とか「複数の」なんて言葉は使ってしまいがちです。「ただしく」「むつかしい」「いくつもの」などとより簡単な言葉に置き換えましょう。

主語を明確に

日本語は、とかく主語を省略しがちです。時として主語を省略したほうが、簡潔で分かりやすく、かつ美しい文章になることも少なくありません。

しかし、ナレーション原稿にかかわらず、主語がわからなくなるような文章は、いい文章とは言えません

プロモーション映像などで、よくある例としては、主語が「商品」そのものの場合と、その商品を作っている「メーカー」の場合、それらが混在することが多々あります。

1つの段落に複数の主語が混在することは問題ありません。ただし、この場合は主語の切り替わりを明確にする必要があるでしょう。 

また、1つの文章に主語は1つであることも忘れてはいけません。

主語が二つできてしまったときは文章を2つに分けます。

 

ひとまずまとめ

当たり前のことばかり書きすぎたような気がしますが、予想外に長くなりそうなので続きは後日。なるべく早くアップいたします。

むしろ、本題はここからです。乞うご期待!