インタビュー
「外観と全景」のエントリーで子供の運動会を撮影する、というシチュエーションで話を進めました。運動会自体の撮影はともかく、アマチュアカメラマンの皆さんに挑戦していただきたいのが、運動会の主役であるお子様のインタビューです。
そもそも、子供の運動会やお稽古ごとの発表会を撮影するのは、子供の成長記録を残しておきたいからですよね。子供が大きくなってから一緒に見る楽しみもあります。
ならば、やっぱり、運動会に出かける前、競技を終えた後の思いや表情を残しておきたいものです。
そこで、今回はインタビュー収録の気を付けたいポイントやコツを書いてみたいと思います。
私は、一時期、報道番組の仕事をしていたことがあるのですが、その時は、街頭インタビューはもとより、都知事選の候補者の出待ちインタビュー、政治家のぶら下がりインタビュー、企業の謝罪会見などあらゆる経験を積みました。
ひとことでインタビューと言っても、そのシチュエーションは様々です。
- 場所と時間をセッティングした独占インタビュー
- スポーツイベントなどの現場で、取材対象者におこなうインタビュー
- 複数の記者による囲み取材
- 街頭インタビュー
- 記者会見
などなど。またTVでは、生中継か録画かによっても手法はずいぶん違ってきます。
ここでは、生中継に関しては考えないことにします。
インタビューは何度やっても難しいのですが、なかでも一番難しいのが街頭インタビューでしょうか。道行く人を捕まえて行うインタビューは断られることも多く、心が折れそうになることも度々あります。
人気番組や有名タレントが出演する番組なら、番組名やタレント名を出すことによって、立ち止まってインタビューに答えてくれる確率はぐっと上がります。
街頭インタビュー以外の場合は、大抵は、ある程度答える覚悟でいてくれます。不倫記者会見や不祥事政治家の場合はともかく。
一番楽なのが共同記者会見です。いろんなTV局、雑誌や新聞が相乗りですから、誰かが聞いてくれるので、映像の場合はただ撮影していればいいだけ。カメラマンに任せて居眠りしていてもどうにかなります。ただし、スクープとまでいかなくても突っ込んだ話はやっぱり聞けません。
話がそれすぎました。
閑話休題。
インタビュー作法 その1 目線
目線について考えましょう。
インタビューするときに、カメラマンとインタビュアーがそれぞれいるのか、あるいはカメラマンがインタビュアーも兼ねるのかによって目線の作り方が変わってきます。
通常、プロの場合はカメラマンがいて、ディレクターがインタビューします。
この場合は、どれだけ頑張ろうと、インタビュー対象者の目線はインタビュアーであるディレクターに注がれます。よって、ディレクターはカメラの横に立ってインタビューすることになります。
複数の人に話を聞く場合は、それを見越して、ディレクターは立ち位置をカメラの右にしたり左にして編集をしやすくします。
ディレクターがカメラマンも兼ねている場合はいやおうなしに目線はカメラになります。
ここでポイントは、どちらの場合も、インタビュー対象者と同じ高さにカメラを構えることです。
運動会で子供に話を聞く場合も、お父さんは面倒くさがらずに、腰をかがめてカメラを構えてください。
また、車椅子の方にインタビューする場合も同様です。
現場の状況にもよりますが、少なくとも、インタビュー対象者より高い位置から話しかけてはいけません。
インタビュー作法 その2 質問の仕方
インタビューで最も難しいことが質問の仕方です。
以前、こんな経験をしました。
あるプロレスラーの試合後の囲みインタビューでのこと。
ある雑誌記者が、話の流れから、「つまり、格闘家と試合をして、改めてプロレスの奥深さを感じた、ということですね」と質問していました。質問されたプロレスラーは「お、いいこといいますね!そう書いておいてください」と返答。
翌週の雑誌には、「○○選手は『格闘家と試合をして、改めてプロレスの奥深さを感じました』と試合を振り返った」なんて記事が載っていました。
全ての記者がこんな風だとは思っていませんが、これは雑誌だからできることであって、映像では成立しません。
「はい」「いいえ」で返答できるような質問をしてはいけない。これは、インタビューの基本と言えます。(ただし、インタビュアーがタレントやアナウンサーの場合など、質問の音声を使うことが前提なら、そのような質問の仕方も、ある程度は許されます)
更に、私が気を付けていることがあります。それは、「解答を聞けば質問内容がわかるような回答を引き出す」ことです。
この前提には、「インタビュアーの声を使わない」「質問内容テロップを表示させない」ことがあります。ですので、編集するとインタビュー対象者の独白のようになるのが理想です。これは賛否、もしくは好き嫌いがあるかもしれないところです。
私の場合は、自身はあくまで裏方であり、インタビュー姿はもとより声だけでも出演すべきではない、ということと、「Q.試合内容を振り返って」なんて言うテロップを表示させたくない、という理由があります。
何でもかんでもテロップを入れないと気が済まない昨今のバラエティー番組ですが、テレビにはテレビの事情があるとはいえ、私は、あれには見苦しさしか感じません。画面上にはできる限り余計な情報は入れたくないのです。字幕を読むのに必死で、せっかく頑張って撮影した映像を見てもらえないのは嫌ですね。
一例として、野球の試合後のヒーローインタビューを考えます。
「スライダーですね」という回答からは質問内容がわからないですよね。
これが、「本当はカーブを待っていたんですが、スライダーが来て、まあ、思い切って振ったらたまたまホームランになったって感じです」と、ここまで話してもらえれば、質問内容がわからなくても見ている人には伝わります。
この後者の回答を引き出す質問の仕方を考えます。
「3回表、2打席目の18号ホームランはどのような球を打ちましたか」と質問するより、「ホームランも出ましたが…」ぐらいの方が、相手にも考える余地を残している分、出てくる言葉数も多くなります。
「解答を聞けば質問内容がわかるような回答を引き出す」ことはなかなか難しく、ずばりこうすれば、とういう方法論を提示しにくいのですが、あえて言えば、「回答を限定するような具体的すぎる質問をしない」ことではないかと思います。
試行錯誤を繰り返してみてください。
まとめ
インタビュー撮影には、背景はどうするか、マイクはハンドマイクかピンマイクか、など考えるべきことは他にもたくさんあります。それらは撮影現場の状況によって対応の仕方も変わります。
それでも、現場の状況にかかわらずいつも大切にしていることは何か、と考えたとき、私の場合は、「目線」と「質問の仕方」でした。少しでも参考にしてみてください。このとおりにする必要はありませんが、ただ漠然とインタビューするのではなく、頭を使って、こだわりを持って挑んでいただければと思います。