Director’s Eye

プロが考える映像作品の作り方

外観と全景

これまでのエントリーでは、ちょっと漠然としたことばかり書いてしまった気がします。

今回は具体的に、アマチュアカメラマン、今まで漠然と撮影していた一般のお父さん方に参考になるようなノウハウを書いてみたいと思います。

これから書く内容は、撮影の初歩の初歩ですが、これを意識すると、例えばお子さんの運動会や発表会でも、ワンランクレベルアップした撮影ができると思います。プロは自然にやっていることですが、アマチュアは全く意識していないことが多いです。

イベント撮影の基本は外観と全景から

 「企画書の書き始め方」のエントリーで「5W1H」から書き始める、と書きましたが、撮影時、特に、運動会などのイベント記録のような場合も、「5W1H」を意識して撮影することが大切です。

まず撮影しなくてはいけないのが、「外観」と「全景」です。これは、「5W1H」のうち、主に「どこで」を表現するうえで欠かせません。

「外観」とはイベント会場を外から見たところ。コンサートならその建物が何かわかる映像、運動会なら学校の正門前から見える姿、ですね。

「全景」はイベント会場そのものです。コンサートならステージ、運動会なら運動場です。

これだけなら簡単のように思えますが、ただ単に「外観」「全景」の2カットさえあればいいわけではありません。

撮影は編集しながら

たまに、本職はスチール、つまり写真だけど、需要があるのでビデオ撮影もする、というカメラマンがいます。そういう方はさすがに、ワンカットごとの画作りはうまいのですが、全ての収録素材を見た場合、編集するには足りない、ということがあります。

何が足らないのか?ずばり、バリエーションです。

一通り撮影している。でも、バリエーションが足らない。なぜそんなことが起こるのでしょうか?それは、「編集」をしないまま撮影しているからです。

撮影しながら編集?と訳が分からないかもしれませんが、ここでいう「編集」は頭の中でざっくり行う「編集」です。完成形をおぼろげに思い描きながら、各カットのつながりをその場その場で判断していくことです。

最初は難しくって迷ってしまうかもしれません。でも、大丈夫、ここで一つコツを教えます。

簡単なことです。一度カメラを構えたら、その場所で最低3カット撮影してみてください

その場所に立った時、見えるもの、気になること、カメラの向きを変えてもいいし、しゃがんでもいいでしょう。もちろんサイズを変えて同じものを撮ってもいいです。

とにかく3カット。注意することは、ズームやパンは使わず、カメラも動かさず、できれば三脚を使って撮りましょう。

といっても、やっぱりわかりづらいと思うので、お子様の運動会を撮影に行くというシチュエーションで具体的に考えてみます。

運動会の撮影をシミュレーションする

運動会が開かれる小学校に着きました。中に入る前に、カメラを持ったお父さんは、ここで小学校の正門を撮影しておきましょう。

ここで3カット。正門の前に立ったあなたに見えるもの。まず正門から学校全体が見えるならばぐっと引いて、できればずーと下がって広い画を撮りましょう。

次にアップで正門に描かれた「○○小学校」の文字を読ませるカットを撮影します。

運動会の看板やのぼりがあるならそれでもいいでしょう。

これで2カット。

最後に正門から入っていくほかの父兄の皆さんを撮ってみてください。顔を写すのが憚れるようなら足元でもいいでしょう。こういう意味のなさそうなカットが実は臨場感を出す効果的なインサートショットになります。

 

正門前ではこれぐらいにして運動場に入ります。

まだ時間があるので「5W1H」の「どこで」をもうワンカット撮りましょう。

運動場の全景がほしいですね。

「子供たちが競技する場所はこれぐらいの広さで、地面はこんな感じで、客席はこんな風で、本部席はこーなって、こんな風な飾りつけがあって、、、、」

この運動場の全景カット、このワンカットにはこんなにも情報が読み取れるんです。

正門前の「どこで」とここで撮影する「どこで」の違い分かりますよね。

じゃあ、ここでも3カット撮りましょうか。

 

何を撮ればいいか、それは、もうさっきの全景カットに入っています。

運動場の中の目についたもの、何でもいいのでアップで撮ってみましょう。無造作に置かれた旗や、バトンなんかいいかもしれませんね。

客席の様子もちょっとアップで撮りましょう。パンはしないで、と書きましたが、横に広い客席ならゆっくりパンしてもいいですね。ただし、パン以外にも、知り合いのご家族や、もちろんご自身のご家族の表情もこっそり取っておきましょう。できればカメラに気が付いていない、自然な表情がほしいところ。

本部席のまでズームできれば、開会直前で、先生方があわただしくしていたり、放送係このどもが練習している様子が撮れるでしょう。

 

ここまで、「5W1H」の「どこで」を撮っているつもりでしたが、よく考えてみれば、「いつ」「なにを」などほかの情報も入っていることに気が付くでしょうか。

ここまで撮った映像だけで、ニュース風のナレーションを入れると、「秋晴れの気持ちのいい日、○○小学校で運動会が行われました」という感じでしょうか。

まとめ

撮影とは、情報の積み重ねです。

「外観」と「全景」の撮影は不可欠です。でも、そのカットだけでは情報が散漫です。それをアップのカットで補足して情報に厚みを持たせます。

写真出身のカメラマンが撮影して、物足りなさが出る原因、それが、このアップのカットの不足です。なぜなら、もしこれが雑誌の記事に使う写真なら、ここまでで必要なのは「運動場全景」ぐらいではないでしょうか。

必要な情報は文章で乗せるのが基本の雑誌と違い、映像作品では、必要な情報はすべて映像で見せます。そのことを忘れないようにしましょう。

イベントの撮影がテーマでしたが、この「『外観』と『全景』+それぞれの場所で最低3カット撮影する」は、どんな場合でも有効です。ぜひ実践してみてください。

イベント本番の撮影についても撮影については、またの別の機会に書きたいと思います。